経済

スルガ銀行の不適切融資が1兆円にのぼると報道され、日銀の異次元の金融緩和による副作用が表面化する形になってきました。

これまで日銀は金融機関などから国債を大量に購入してきましたが、現在、その保有残高は約447兆円に上ると言われています。その買い取ったお金は日銀の当座預金にブタ積みになっており、世の中にはお金が回ってはいないといわれていました。

そのような状況のなか、スルガ銀行は融資で世の中にお金を回そうとしたわけですので、その方向性自体は正しかったのかもしれません。

けれども、実業ではなく、不動産投資という投機に近い分野に手を出したことが命運を分ける形になりました。結局、日本の銀行は担保主義から抜け出せていなかったのかもしれません。

支払い能力のあやしいサラリーマンにも高額な融資をしていたと言われており、10年前のリーマンショックを彷彿とさせる様相を呈してきております。これをサブプライムローンというのかどうかは不明ですが、いずれにしても既に多額な借金を抱えてしまったサラリーマンが出てきました。

ここで素朴な疑問が出てくるわけですが、果たして他の地方銀行は大丈夫なのでしょうか?

ぼくの調べた限り、直近5年の地銀全体で3兆円増の残高14兆円程度と見ていますが、今回のように「住宅ローン」のような形のものも含まれていたとなると、融資残高が2倍、3倍になってしまう可能性があり、個人の不動産投資の実態には不透明な部分があります。

くしくも来月の9月15日は、2008年9月15日のリーマン・ショックから10年の節目にあたりますが、何かが起こりそうな予感がしてきました。

財務省によると、6月末での日本の借金が10,889,851億円になったそうです。

これを日本の人口12,659万人(7月末)で割ると約860万円、現役世代(15~64歳)の7,578万人で割ると1,437万円の計算になります。

財務省理財局の資料のため、これまでの一連の経緯を考えると信ぴょう性に乏しい面もありますが、概ね日本は借金大国であるといっても過言ではありません。

理論上、日銀がすべての国債を購入できれば、国債利払いは国庫納付金として国民の財産にはなりますが、買い取り残高はまだ448兆3,261億円(29年度)程度に留まっており、この辺りで限界が見え隠れしてきました。

現在、トルコ国債の10年もので21.530%となっていますが、仮にこの程度まで金利が上昇してしまうと残高500兆円(962-448)としても100兆円程度の利払いが発生することになります。現在の日本の税収の58兆円ではとうてい返済できなくなってしまいます。

こうなってしまうと、不足分の42兆円を借金してくるか、税金を1.72倍程度まで引き上げるしかありませんが、いずれかの時点で限界は出てくる気がしてなりません。

また、日銀自体についても国債を買い取った膨大なお金は当座預金にブタ積みになっているといわれており、利上げが実行されると大きな負担が発生してきます。

果たして、10,889,851億円の借金を完済することが本当に可能なのでしょうか?

いずれにしても、あと数年程度で結果は出るのではないかとぼくは感じています。

マイナス金利導入後、銀行の収益は圧迫されていますが、日銀が長期金利の上昇を認める方向で緩和政策を調整することになりました。

長期金利:10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし...(以下、省略)

果たして、これは出口政策なのでしょうか?

市場の反応は為替が円安の方向へ進んでいるほか、銀行銘柄は概ね下落しており、また直ちに緊縮政策とならないことから日経平均株価はプラスの結果になりました。

銀行銘柄が下落したということは、収益改善にはまったく期待はずれの内容だったものと思いますが、期待外れだったために金融緩和が今後も継続するととられ、日経平均株価はわずかに上昇しています。

2%の物価目標の達成がほぼ不可能な状況のなか、いずれ金融緩和を大幅に修正しなくてはいけなくなるものと思われますが、当面は緩和継続という受け取られ方をしたもようです。

今回の長期金利変動の容認を出口政策とするには弱すぎる内容だったかもしれません。

欧州のECB(European Central Bank)が今月の6月14日、年内にも出口戦略をとることを決定したもようです。はやければ来年にも利上げに踏み切るのではないかと見られていますが、金融緩和の終了と利上げは世界的な流れになってきました。

日本はまだ出口戦略を取れる状態にないことを考えると、日米と日欧の金利差が拡大し、資金は米国や欧州へ向かうことになるのかもしれません。

結果として、今後の為替は円安ドル高へシフトするのではないかと感じています。いずれ、1ドル120円程度までは円安ドル高に進む可能性も出てきました。

一方、日銀が物価目標2%をいつまで掲げるのかは不明ですが、2%の達成はほぼ不可能という雰囲気になりましたので、いずれかの時点で目標を切り下げてくるものとぼくは考えています。ただし、金融緩和を止めるとはなかなか言い出せない状況でもあり、2%の目標を放棄することは出口戦略へのシフトを意味しますので、一気に円高が進んでしまう可能性があります。

その結果として、1ドル100円を割り込んでくる可能性も考えられます。

そうなってしまうと、デフレマインドにさらなる拍車がかかることになり、今までの金融緩和の努力が無駄になってしまいます。かといって、このままマイナス金利を続けていけば、金融機関の収益力が低下し、破たんする可能性も現実味を帯びてきました。

加えて、来年の消費増税以降、消費はさらに冷え込み、デフレマインドが強固になってしまうとみられており、ひくに行けない状況に陥ってしまった感じも否めません。

日銀が金融緩和をいつやめるのか、それとも日本の最後まで走り抜ける決意なのか、そのあたりは分かりませんが、タイミング的にはECBが利上げに踏み切ったあたりではないかと感じています。

日銀が2019年度頃を予定していた物価目標2%の達成時期を削除することに決めたようです。6回も先送りしてきた以上、当然といえば当然ですが、逆にいえば、達成時期を捨てるのは異次元の緩和政策が限界に達しつつある証拠ともいえます。

「これ、無理っぽくね?」と思いつつも、異次元の緩和を続けてきたわけですが、次第に副作用が強くなってきた状況のなか、いずれかの時点で金融緩和を中止しないといけません。おそらくは、2%達成を待たずして出口戦略に入るものと考えておりますが、ぼくはその時期をズバリ2018年~2021年の間と予測しています。

特に注目すべきはETF買い入れですが、これを売らずに据え置くという選択肢はあるのでしょうか?

ぼくはそのような選択はしないだろうと考えており、その兆候が見えた際には空売りを入れる用意をしてその時期を待っております。

日銀の政策については当たらずとも遠からず、非常に惜しいポイントを突いてましたが、インフレに対するマインドセットが気持ち弱めだったのではないかと感じています。デフレマインドを取り崩すチャンスはマイナス金利の導入時点にあり、あの時にもっと突っ込んだマイナス金利をしておけばよかったものの、銀行への配慮か中途半端なものになってしまいました。

いずれにしても、来年の消費増税後でさらにデフレマインドが強固になると思いますので、今回の日銀の2%達成時期の放棄については、当然といえば、当然のことなのかもしれません。まだ2%目標の達成自体は放棄していないようですが、果たして本当に達成する時は来るのでしょうか?

いずれ2%の目標自体も知らないうちに削除されるのではないかと感じています。