経済

厚生労働省が18日に発表した勤労統計調査(時系列表第6表 実質賃金指数)によると、確報値で4月の実質賃金がマイナス0.1%に下方修正されました。先日の速報値では2年ぶりに実質賃金がプラスに転じたという報道がなされましたが、確報値では一転してマイナスに転じております。

これはすなわち、何を意味するのかというと給与は実質的に上がっていないという意味です。安倍首相が口がすっぱくなるほど賃金を上げろと何度も要請したにもかかわらず、企業側はシカトを決め込んだ形になってしまい、この結果には安倍さんもガッカリのご様子だったのではないかなと思います。(詳細不明)

一方で、増税の波が押し寄せてきており、消費税はすでに8%に上がり、今後は10%まで引き上げられます。加えて、今月から年金生活者の介護保険料が大幅にアップしており、他の社会保険関係の負担も大きくなってきました。また、先日の1ドル125円の円安の影響による物価上昇はこれから本格化することが見込まれておりますので、今後もさらなる値上げラッシュが来ると考えてもよいでしょう。

そのようななか、確報値で実質賃金をプラスにするにはどうすればよいのでしょうか?

それは企業がさらに給与の増額をするか、もしくは円高に戻して物価を下げるか、もしくは減税をする他ないです。けれども、ベースアップは年1度きりですので、しばらくは上がる見込みがありません。今回の確報値でマイナスだったのは、今後のアベノミクスを占う上で重要な判断になりうると僕は考えております。

この18日の発表を受けたのかどうかは不明ですが、日経平均株価が下落しており、株価もあやしげなふいんきが出はじめてきました。ギリシャもあやしげですし、それを口実にして円高に振れることがあれば、株価下落にもつながりかねません。

ギリシャ問題のゆくえが世界経済へどのような影響を与えるのか、今後も目を離せない展開になってきました。

速報値ですが、毎月勤労統計調査によると実質賃金が2年ぶりに前年同月比0.1%のプラスに転じました。0.1%が多いのか少ないのかは不明ですが、プラスに転じたことで先行きに明るさが出てきております。

けれども、この先、消費税増税も控えておりますし、円安による物価高はこれからやってきます。円安125円になったのはつい先日のことですので、円安による値上げラッシュと増税の可処分所得の減少による消費の冷え込みはまだ何もはじまっていないといえます。

そのような状況のなか、この春の実質賃金の増加はわずか0.1%という結果でした。1年間はこの状況が継続することが予想されますので、この数字でこの1年を乗り切ることができるのかという懸念が出てきております。また、あくまで速報値での話であり、確報値では下方修正される懸念もあります。

この先に想定されている増税や物価高を考えると、5%ぐらいの実質賃金アップでトントン、景気回復を実感するには10%以上の数字がないと厳しいものと思われますが、結果として0.1%増という結果に終わってしまいました。

総じて考えますと、輸出型大企業と中小企業の格差が拡大していく方向へ向かっていると思われますが、今から輸出企業の銘柄を物色するには、多少、高値感も出てきております。日経平均12連騰のあと、そろそろ調整される時期が来てもおかしくないかもしれません。

今回の実質賃金の上げ幅では、今後の消費の冷え込みは避けることが出来ない数字が出てきてしまったため、内需型の輸入企業の銘柄は、ちょっと手が出しづらい時期に入ってきたように感じております。

1ドル124円に円安が加速する流れを受け、日経平均株価も高値を更新しております。この円安ドル高の原因については、米国景気の好調を受け、FRB(連邦準備制度理事会)が利上げをするとの予測が市場関係者の間で流れたためですが、今後は円を売り、金利の高いドルを買う動きが生じると予想されています。

一方、この円安水準では国内消費の大幅な落ち込みは避けられない状況になってきました。海外投資家はこれまで日本の内需回復への期待感から日本株を買ってきましたが、賃金の上昇はきわめて限定的なものに留まっており、2017年4月には消費税増税も予測されているため、この段階での120円を超える円安は内需を崩壊させるとの見方が強まっています。

1ドル120円が耐えられる円安の限界だと見る専門家も多く、124円を超えてくるようだと加速化の流れをとめられなくなり、年内に130円を超えるのはほぼ確実との観測がなされています。2007年に124円で三角持合いを下離れしたあと、それを全て戻す形で上値を超えてきましたので、今後は円安への加速化の流れがとまられなくなると考えてよいでしょう。現状では原油安がストッパーとなっていますが、原油高になると景気の落ち込みは避けられなくなります。

今回の円安124円の影響はまだ出てきていません。企業が値上げに踏み切るのは秋口頃と考えられており、130円を突破した際の値上げは来年の春ごろになるものと予測されています。そして、17年4月の消費税10%への増税が待ち構えており、景気回復へどの程度影響が出るのか懸念されております。

結果として、国内消費が大幅に落ち込み、内需型企業の業績が低下、税収が減少、赤字国債の発行、増税、さらなる消費の落ち込みへとスパイラルされ、悪循環が止まらなくなってしまうかもしれません。

日経平均が15年ぶりの2万円台をキープしていますが、おととし5月のような押し目がくるのかが気になるところです。淡々と上がってきていますが、このまま淡々と2万5000円までいくのか、それとも押し目がくるのか、気になるゾーンに入ってきました。

警戒感から損切設定をしていく人が多くなっているはずですので、一旦、下がり始めると連鎖的に暴落を誘発してしまう可能性もあるかもしれません。おととしのトラウマがある人が多いはずですので、それを利用されて売らされることもありそうな気がします。

そんななか、30日に控える日銀の金融政策決定会合に注目が集まっています。4月30日に追加緩和があるのか、それとも、7月か10月になるのか、もしくはもうないのか、このあたりで意見がわかれているもようです。

もし、追加緩和が見送られると、タイミング的に売られる可能性を警戒しておかなくてはいけません。GW前ということもありますし、また、セルインメイを控えていることもありますし、日経平均2万円をキープするには、4月30日が重要なポイントになるような気がしております。

年内のインフレ2%の達成がかなり困難な状況になってきていますので、ここらでサプライズの追加緩和をしておかないとさらに困難になっていく気がしています。

黒田総裁によると「今年の秋以降、かなり加速していく」とのことですので、ボク的には7月あたりの追加緩和では間に合わない気がするので、タイミング的にはこの4月30日に何かあってもおかしくない気がいたしております。

日本がAIIB(アジア・インフラ投資銀行)への参加を見送りましたが、このような決断を迫られる機会は今後も多くなっていくとボクは予測しております。

結局、アジアの一員として中国につくか、それとも西欧諸国の一員としてアメリカにつくかという決断になるわけですが、近隣諸国は話の通じる相手ではありません。尖閣や北のミサイル、あるいは慰安婦像などの問題をみても、反日感情の強い近隣諸国に歩むよるという選択肢はないものと思われます。

この近隣諸国の筆頭が中国ですので、日本政府はハナから参加する予定などなかったのではないでしょうか。経済的な利害関係が非常に大きければ話は別でしょうけれども、例えメリットが大きいとしても慎重にならざるをえません。

参加することによる具体的なメリットでいえば、日本企業が海外で仕事を受注しやすくなるということに尽きるかと思いますが、麻生さんの話によると、そんなメリットは期待できないとのことです。

日米で三割の出資を占めるアジア開発銀行(ADB)の場合でも、日本企業が受注する比率は0.5%程度しかなく、AIIBにおいてはもっと下がるはずなので、参加・不参加に関わらず、どの道メリットなどはないようです。

仮に企業が受注できるのだとしても、マクドなどは中国産のナゲット問題を契機に経営が傾いておりますし、とにかく関わらないのが一番いいのではないかという印象があります。

そもそも、中国はアジア開発銀行での債務国なわけですから、借りる側か貸す側かでいえば、借りる立場にあるのではないでしょうか。たぶん、アジア開発銀行は審査が厳しいから、独断で融資できるような新しい銀行を作ろうという意味なのでしょうけれども、銀行というよりも、街金に近い形になるのではないかという気がしております。

個人的には不参加で大正解だったように思いますが、AIIBの今後のゆくえにも注目していきたいと思います。