GPIFの2016年4〜6月期の運用損失が5兆2342億円にのぼる結果となり、直近1年間でみると約11兆円規模に膨らむ事態になりました。万一、このまま四半期5兆円ペースで進むと今年度は約20兆9千億円規模の損失に繋がることが想定されています。
仮に、現在の20歳から64歳までの現役世代の人口を7,400万人としますと、20兆円では一人あたり年間28万円の年金負担額に匹敵する計算となってしまいます。もちろん、このまま四半期あたり5兆円のペースで損失が膨らんだ場合というお話ではありますが、今回の4月〜6月期までの5兆円の損失のみでみましても、現役世代一人あたり約7万円程度の年金負担額に相当する金額がわずか3か月間でふっとんだ計算になるわけです。
昨年度の損失についても約5兆円規模になっていましたので、直近1年間では合わせて11兆円規模の積立金が消失した形になります。
政府は長期的にみれば問題ないという見解を示していますが、少子高齢化により、直近では4兆円規模の取り崩しが発生しているなか、このままのペースでいけば、長期的な運用が不可能になってしまう懸念があります。
例えば、仮に個人が種銭1,000万円で株をやっていて3割下落し、300万円溶かしたとします。その700万円の状態の時に子供の学費で400万円必要となり、株を売って取り崩したとすると残りの種銭は300万円になります。この300万円で以前の300万円分の損失を取り戻そうとすると、投資パフォーマンス10割の利益が必要になるわけです。
年金資金の場合、少子高齢化により毎年のように取り崩しが必要になってくる懸念があり、種銭がどんどん目減りしていくなか、長期戦になればなるほど今回の損失を取り戻すのは不利な状況になるといえるでしょう。
この取り崩し要因による株の売り圧力としては、年間1兆円前後かとぼくは想定しておりますが、GPIFが取り崩しで売れば下がりますので、下がるまえに売っておこうという市場心理が働き、今後は株価の下落基調に拍車がかかることが想定されています。
結果として運用損が拡大することで、年金の株式運用中止の方向へ世論の圧力がかかった場合、GPIFの保有株をすべて売却してしまうことになる可能性もありますので、株へ投資する人はそのうちいなくなってしまい、取り残されたGPIFだけが企業の大株主に名を連ねる結果になるとぼくは予想してます。
これを回避するには、日銀がお札を刷って株を買い、GPIFの取り崩し分を吸収するよりほかないような気がしていますが、今後も日本株の行方に注目していきたいと思います。