シェールショック懸念から円高ドル安は今後も加速する

最近の原油安の背景にはアメリカのシェールオイルの供給増がありますが、原油を輸出したいアメリカとそれに対抗する中東OPECによる安値競争がチキンレース化している状況といえます。

シェールオイルは採掘技術の難しさからコストがかかるといわれており、その採算ラインは1バレル50ドル程度といわれてます。このシェール革命によってシェアを奪われた中東諸国は、市場価格が下落しても減産せず、市場に原油をだぶつかせることにより、シェールオイルが採算割れをする価格まで下げようという意図がかいまみえます。おそらくではありますが、シェール企業が採算割れで破綻するまでは、中東OPECは現在の安値を維持していくことでしょう。

シェール企業は現状では何とか持ちこたえてはいるものの、WTI原油価格は既に危険水域を割り込んできており、今後は破綻する企業が相次ぐといわれています。日本の企業でも、2015年の3月期には住友商事がシェールオイル開発で巨額な損失を計上しておりますが、原油価格の下落や中国の景気後退による需要減により、シェールオイルでは利益を見込めないと断念する企業が増加していくはずです。

このシェール関連企業が相次ぐ倒産という事態になれば、関連する金融商品への影響も大きく、かつてのリーマンショックを上回る規模になると専門家は予測しています。リーマンショックは不動産のジャンク債による金融機関の相次ぐ破綻でしたが、次にくるシェールショックはオイル関連企業のジャンク債による破たんといえます。

一般に、原油価格の下落はエネルギー需要減による景気減退という受け止められ方をされ、それにより株などから資金を引き揚げて安全な円などにリスクオフされるため、円高になるといわれています。

けれども、今回は原油価格の下落によって、シェールショックの可能性が次第に高まってきていますので、株式市場からは徐々に資金を引き上げられて円高に向かうという流れが構築されつつあるのです。

なので、原油価格が元の状態に戻らない限り、当分の間は資金が株式市場へは戻ってこず、さらに円高が進むものと考えていてもよいでしょう。結果として、円高に連動する形で日経平均株価は下落するものと予測されておりますが、シェール企業の破たんが明るみになってきた際には、日経平均株価が5,000円~7,000円を割ってくる余地も残されています。

もし中東OPECが減産に転じたとしたら、円安に向かう可能性も残されてはいますが、ここで原油高に戻してしまうとシェール企業が息を吹き返してしまい、市場でのシェアを失ってしまいかねませんので、これまで原油安に耐えてきたコンコルド効果から現時点で手を引くことはないと思われます。

最終的に懸念されるのは、アベノミクスで拡大されてきた年金資金のゆくえがどうなってしまうのかという点ですが、これまで十数年にもわたって積み上げてきた50兆円規模の運用利益が目減りしてしまう可能性も否定できなくなってきました。