赤字続きで業績が悪化し、資金難に陥っている会社が新株予約権を発行するケースがよくあります。ピンチの会社が発行した新株予約権を投資会社などに引き受けてもらい、資金を調達することで難局を乗り切るという手法になりますが、この制度が悪用されているケースが多いように感じて仕方ありません。
といいますのも、この新株予約権には行使価格が設定されており、特定の期間内であれば、それを行使してもしなくてもかまわないからです。市場での株価が行使価格よりも上がったときにだけ株を取得して、すぐに市場で売却すれば、投資会社は簡単に利益を上げることができてしまうのです。
当然、大量に株が売りに出されることで株価が下落しますし、新株発行による増資で希薄化にもつながりますので、既存株主が損失を被ることになり、一般的にはこの新株予約権のIRが出た時点で個人投資家に敬遠されて株価が下落する傾向にあります。
一方で、株価が下落してしまうと新株予約権が行使されず、資金調達ができなくなってしまうため、投資会社やその赤字会社は何とか株価を上げようとしてきます。
具体的には、実現しそうもないIRを発表し、あたかも業績の見通しが明るいニュースを発表して株価を吊り上げてくるわけですが、そのようなニュースにつられて個人投資家が株を買い、市場価格が新株予約権の行使価格よりも上がってきたところで株を取得し、すぐに売却されてしまうのです。結果として、株価が急落してしまうパターンが多い傾向にあります。
その赤字会社は新株予約権で資金調達をすることができ、また投資会社でも吊り上げた株を売却することで利益を得ることができますが、株価の急騰につられて飛び付いた個人投資家だけが損をするというパターンが多くなっているように感じています。
もちろん、資金難で倒産ということになれば、既存株主の株は紙くずに変わるわけですので、それを考えれば、新株予約権の引き受け手がいるだけでもメリットがあるのかもしれませんが、その投資会社は長期的な保有を意図したものではありません。行使価格よりも上昇すれば、すぐに大量の株が市場で売却されてしまうため、高値でつかまされた個人投資家が損失を被るというケースが非常に多くなってきています。
この新株予約権の問題点は、実現しそうもないIRニュースを連発することで株価の上昇を演出することにありますが、非常にうさんくさい内容のものが多いということです。目的は株価を吊り上げ、新株予約権を行使することにありますので、何でもいいから材料を出して個人投資家の買いを集めるというパターンが見え隠れします。
ただ、そのIRニュースの内容の真偽については誰も確かめようがありません。社長が本気で業績が回復すると見込んでいれば、それは虚偽とはいえませんので、詐欺にあたるかどうかは紙一重といえます。
一方で、従業員のモチベーションアップを目的とした新株予約権については、すぐに市場で売却される性質のものではなく、こちらは長期保有目的になります。従業員のモチベーションがアップすることで業績が改善すれば、既存株主にもメリットがあるので、この場合の新株予約権は特にデメリットはないものと思われます。
その新株予約権がどのような性質のものかを正確に見極めることが、投資する上で大切なことといえるでしょう。